材料・道具紹介
Materials & Tools
江戸表具の製作には、裂地・紙・糊・木材・金物・陶磁器など多様な材料が用いられます。また、用途や工程に応じて数多くの道具が使い分けられています。
裂地(きれじ)
金襴(きんらん)
金糸・金箔糸を緯(よこ)糸に用いて文様を織り出した、高度な織技術による裂地です。華麗な光沢と重厚な存在感があり、格式の高い掛軸・屏風などに古来より用いられてきました。文様や織りの密度によって格調が変わり、作品の格を上げる「表具の要」とされる素材です。
銀襴(ぎんらん)
銀糸・銀箔糸を用いて文様を織り出した裂地で、金襴に比べて穏やかで涼やかな光沢を持つのが特徴です。過度な華美さを抑えつつ上質感を与えるため、仏表具や近代作品の軸装にも幅広く用いられています。
金襴
(きんらん)
銀襴
(ぎんらん)
緞子
(どんす)
無地
糊
正麩糊(しょうふのり)/新糊
小麦粉からグルテンを分離・精製したでんぷん糊で、文化財の修復や表具、絵画の裏打ちなどに使われる伝統的な接着剤です。水と混ぜて煮ることで粘り気のある糊になります。保存料を含まないため、時間が経つとカビが生えたり、粘着力が落ちたりします。
正麩糊(しょうふのり)/古糊
新糊を甕(かめ)に入れ水を張り、冷暗所で数年〜10年ほど寝かせて熟成させた糊で、接着力が弱く、柔軟でしなやかな仕上がりが得られます。掛軸や巻物の中裏打ち・総裏打ちなど、後の修復で剥がしやすさが求められる工程に最適で、軸装の質を左右する重要な材料です。
正麩糊/新糊
(しょうふのり)
正麩糊/古糊
(しょうふのり)
布海糊
(ふのり)
膠
(にかわ)
紙(和紙)
美濃(みの)
岐阜県美濃地方で伝統的に漉かれる和紙。柔らかく繊細でありながら強靭で耐久性にも優れています。「本美濃紙」は伝統的な楮原料と製法を継承する手漉き紙として、国の重要無形文化財・ユネスコ無形文化遺産に登録されています。表具では裏打ち紙の基準とされる代表的な和紙です。
美栖(みす)
奈良県吉野地方で古くから漉かれてきた楮紙で、胡粉(ごふん)を漉き込み、漉き上げ直後に干板へ伏せて天日乾燥させる「簀伏せ(すぶせ)」によって、薄手で柔らかな紙質に仕上がります。掛軸の増裏打ちに不可欠な表具用和紙として重用されてきましたが、現在は漉き手が大幅に減少しており、技術保存が課題となっています。
宇陀(うだ)
奈良県吉野地方で漉かれてきた楮紙で、原料に白土(はくど)を漉き込むことで透け止めと防虫性・耐久性・弾力性を持たせているのが特徴です。柔軟性がありながら強靭で、掛軸の「上裏(総裏)打ち紙」に最適とされ、古くから国宝・重要文化財の修復にも用いられてきました。
石州(せきしゅう)
島根県西部・石見地方で約1300年にわたり漉かれてきた和紙で、地元産の楮(こうぞ)を中心とした原料と独特の原料処理により、非常に強靭で耐久性に優れているのが特徴です。古くは大阪の商人の帳簿紙として重宝され、火事の際には井戸に投げ込んで守ったという逸話も残っています。
美濃
(みの)
美栖
(みす)
宇陀
(うだ)
石州
(せきしゅう)
間似合
(まにあい)
細川
仕上げ材
葛布(くずふ)
葛の蔓の靭皮繊維を手作業で糸にし織り上げた布で、軽さ・強さ・光沢を備えるのが特徴です。鎌倉時代から作られ、静岡県掛川市を代表産地とし、芭蕉布(ばしょうふ)・科布と並ぶ日本三大原始布の一つにも数えられます。現在は襖紙・壁紙や民芸品など幅広い用途に用いられています。
葛布
(くずふ)
芭蕉布
(ばしょうふ)
唐紙
(からかみ)
道具
刷毛
糊を均一に塗布する「糊刷毛(のりばけ)」、作品を伸ばして裏打ち紙を撫でつける「撫刷毛(なでばけ/なぜばけ)」、叩いて紙同士を密着させる「打刷毛(うちばけ)」などがあります。ほかにも水刷毛・切継ぎ刷毛・しごき刷毛など多様な種類があり、毛材は馬・山羊・鹿・狸・豚の獣毛のほか、棕櫚(しゅろ)や津久(つぐ)などの植物繊維も用いられます。用途に応じて硬さやコシを選びます。
刃物
紙や裂地(きれじ)の裁断、木材の加工など、表具作業ではさまざまな包丁や小刀を用います。寸分の狂いなく仕上げるためには、刃の研ぎや扱いも重要な技術の一つです。中でも丸くカーブした刃を持つ「丸包丁」は、裏打ちを施した裂地を滑らかに正確に裁断するうえで欠かせない代表的な刃物です。
刷毛
刃物
裏摺り
(うらずり)
鉋・鑿・鋸
(かんな・のみ・のこぎり)
その他小道具
その施工には江戸表具を継承する東京表具経師内装文化協会の表具師(会員)に、ご用命いただければ幸いです。


