江戸表具を新規に作成なさる際や、お使いの表具類を作り替えられる際には、是非伝統的な技術・技法、良き素材のものを用いていただけることを願います。
その施工には江戸表具を継承する東京表具経師内装文化協会の表具師(会員)に、ご用命いただければ幸いです。
壁 張 付
KABEHARITSUKE wallpaperings古く、城郭の御殿や寺社の床の間・書院などの壁面は和紙で覆われ、そこに絵師たちによって大和絵や水墨画などが描かれました。襖絵とともに「障壁画」(しょうへきが)とよばれるその室内装飾は、表具師や経師による壁張付の技術によって支えられてきました。優れた和紙と確かな技術の証として、現代でも多くの文化財建築に昔の障壁画が残されています。
時代は下って明治になると、洋風建築と共に壁紙が日本に登場しました。まもなく壁紙は国産化され、金唐革紙をはじめとして、和紙の製紙加工技術を生かした優れた壁紙がつくられました。当然の成り行きとして、施工にも表具師や経師が活躍することとなります。西洋の石の建築と異なり、日本ならではの木材を多用した洋風建築において、壁装もまた、日本の素材と技術を生かして発展したのでした。
高度な伝統技術を必要とする壁張付の工法
壁張付の伝統的工法としては、木の板を並べて打ち付けた木摺り(きずり)下地や、角材を組んだ組子下地の壁などに、下張りの和紙を重ねていきます。仕上げの上張りには、和紙や織物といった自然素材や表情のある素材が用いられ、居住空間をゆたかに彩ります。
工程のすべての段階で、用いる和紙も張り方もさまざまに異なり、素材の特性を熟知していること、高度な伝統技術が必要とされることが、江戸表具の壁張付を伝統的工芸品とするゆえんです。
梅雨や夏の時期など、高温多湿な日本の住環境においては、袋張りや総ベタなど調湿効果の高い和紙を重ねて張って仕上げる壁張付の技法は、環境にも人にも優しい壁仕上げとなります。
伝統的な技術又は技法
- 壁張付にあっては、次の技術又は技法によること。
- 下張りは、「廻りベタ・総ベタ」、「袋張り」、及び「清貼り」によること。
- 仕上げの張り込みは、「上張り」によること。
(経済産業省伝統的工芸品指定の告示より)