巻子(かんす)は、紙が発明されて最初の書物の形態で、日本の表具の起源ともいわれています。中国南北朝時代に成立した画巻の形式が、飛鳥時代に日本に伝わったもので、奈良時代や平安時代の書籍、記録などは、ほとんどが巻子でした。別名で巻物、横巻、巻軸などともいわれます。

巻子は両手で繰り広げながら見る形式で、一度に多くの内容を閲覧できる点が特徴です。そのため、連続する時間経過を追う仏教説話画や家系図、経典などに適しており、しまう時は巻き取って保管・収納できるという利点も相まって盛んに用いられてきました。

この、広げる・巻き取る、という繰り返しの動作を可能とするために、表具師による巻子の仕立ては、耐久性と柔軟性の両立が求められます。
なお、現代において、続き物の図書を「1巻、2巻…」と数えますが、この「巻(かん)」という言葉は、巻子が由来となったものです。

巻子装について

紙を横に糊で張り継ぎ、先端に「表紙竹(表木)」、末端に「軸棒」が付き、軸棒の先端には「印可(軸先)」が付きます。保管の際は、表紙竹に付いた「巻き紐」で巻いて固定します。本紙の周囲は、「玉地」「引首」「奥付」と呼ばれ、和紙で装飾が施されることもあります。

《巻子各部の名称》
《巻子各部の名称》

伝統的な技術又は技法

  1. 掛軸及び巻子(かんす)にあっては、次の技術または技法によること。
    1. 本紙及び布地の裏打ちは、「肌裏打ち」をした後、「増裏打ち」をすること。
    2. 本紙の周囲に「切継ぎ」をすること。
    3. 打刷毛を用いて「上裏」を行い、乾燥後に「裏摺り」をすること。

経済産業省伝統的工芸品指定の告示より)

江戸表具を新規に作成なさる際や、お使いの表具類を作り替えられる際には、是非伝統的な技術・技法、良き素材のものを用いていただけることを願います。
その施工には江戸表具を継承する東京表具経師内装文化協会の表具師(会員)に、ご用命いただければ幸いです。
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